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Q-1
天使

 思ってもないことを言うなど造作もない。表情も然り。念を使わなくても世の中の過半数には素手で勝つ自信がある。
 端からクロロはネオンを殺すつもりなどないのだ。ネオンの能力は極上なのだから。
 惜しいことを言えば、ネオンがクロロのもとに来た遠距離の瞬間移動能力も盗みたいと思ったが、不可能だ。今クロロは念の使用が禁じられているし、ネオンの話からすると恐らく術者は死んでいる。
 術者の死があるから途方もない距離の移動が可能になったのだろう。なにせ大陸さえ違う。
 全ては、推測に過ぎない。

 そこらに放ればこんな生活力のない女など一瞬の命だ。
 念を取り戻した時のクロロが必要とするネオンを、養う理由ならいくらでも作れた。それにネオンを手元に置くのは道楽だ。ネオンは世間知らずだが馬鹿ではない。証拠はクロロ自身を占ってもらった時だ。
 あの時、クロロは難解な言葉遣いをした。なのにネオンは違和感なくそれを解釈し、なおかつクロロのどこかを揺さ振った。年端もいかないひとりの女に。受け売りだと言っていたがそれがネオンから紡ぎだされた言葉なら、クロロにとってはそれ以外ではありえない。
 興味をそそられた。

 ネオンの人生でクロロにぶち当たったのは不運としか言いようがない。クロロにさえ目をつけられなければ、あの優しい占いで、幸福な人生を送れていただろうに。

 クロロにとって道楽の意義の対象は自分も入る。
 ゲーム機だけを眺めるこの退屈を何で埋めよう。
 信念が芯にあるからただ待つこともやぶさかではないが、ネオンがクロロの前に舞い降りてきた時、答えは出ていた。

以上

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